小牧地区土地宝典(地番地積地目入図)を入手しました

 

 昨年、土地境界の立会いの際にある参加者の方が「土地宝典」を持参してこられました。土地家屋調査士にとってはあるあるかもしれませんが私自身は初めての様な気がします。書籍などで土地宝典の存在は知っていましたが、現に境界の資料として持ってこられる方はほとんどおられませんので珍しがりがてら、内容を拝見させていただきました。

 

 時を経て先日、某オークションサイトで土地宝典の出品を見て、なかなか美品で、お値段も手ごろのように思いましたので気軽に一つ入札しましたら、そのまま落札と相成りましたのが今回ご紹介する土地宝典(愛知県小牧市小牧地区土地宝典地番地積地目入図)です。

 

 まず「土地宝典」とはなにかをざっとご紹介しますが、ここでは国立国会図書館のサイトから解説を拝借します。

 

 

 『明治以後、租税の対象となる所有地を調査・確定するため、土地台帳や地籍図が公的機関により作成されました。土地台帳とは、その地域の区域名称(町名・大字・小字など)、地番、地積(坪数、面積)、地目(土地の種類:田,畑,山林等)、等級、所有者名といった情報を収録するものであり、地籍図とは一筆ごとの土地の区画形状を測量した土地台帳の附属地図です。土地台帳と地籍図とを合体させるなどして、該当箇所と所有者を確認しやすいように民間で編集して刊行された地図帳を「土地宝典」と呼びます。

「土地宝典」の収録内容は、地番と地積しか収録されていない簡便なものもあれば、複数の情報を詳細に収録するものなど、資料によって様々です。また、「土地宝典」のほか、「字限図」「一村字限切図(字限全図)」「地籍地図」など多くの呼び方があります。』

 

(国立国会図書館 https://rnavi.ndl.go.jp/jp/maps/post_1220.html)

 

 

 まあ、土地宝典をざっくり表現するならば、土地家屋調査士が官民境界確定協議の際などに添付する「土地合成図」の大規模版ですね(所有者は載ってませんが…)。

 

 

 土地宝典についてはこれまでそれほど学術的な研究の蓄積もなく、管見の限り大羅陽一氏の論稿「土地宝典の作成経緯とその資料的有効性,歴史地理学,137,pp.1-20,歴史地理学会,1987.6」がある程度です。今回はそこで指摘されている項目を参考に、この土地宝典を分析していくことにします。

 

 まず、発行年時ですが昭和54年2月、発行所は「帝国市町村地図刊行会」となっています。もっともらしいと言いますか、いかにも威厳ある団体の様なイメージを持たれそうな発行所の名称ですが、恐らく財団や、社団などの法人ですらなく個人かと。記載されていました藤枝市の住所もグーグルマップで検索したところ現在は賃貸アパートのようでした。

 

 ちなみに大羅氏の論文では土地宝典の発行社として26社を挙げられていますが、氏の調査の範囲は主に関東であり、全国的にはもっとあるものと思われます。ただその中でも、戦前から戦後にかけて長い時期にわたって土地宝典を数多く発行していたのは今回の「帝国市町村地図刊行会」のようですね(大羅氏によると本社は神奈川と記載されています)。地域的にも今回の愛知県はもちろん、滋賀県でも戦前は発行を手掛けられていたようです。

 土地宝典の販売価格については大羅氏の論文でも指摘はありません。今回購入した土地宝典も(非売品)とあります。しかし、税金で発行しているものではなく、あくまで民間業者によるものですから販売しなければ発行はできません。想像ですが、非売品とすることによって販売額を調整するようなことをされていたのかなーと思います。でなければ自治会か、区画整理の事業者などとの一括契約、またはそれらを通じての募集販売が考えられますが、他社の土地宝典はどうなっているのでしょうね。

 

 今回はここまで。土地宝典の内容にはふれませんでしたが、長くなりますので以降何回かに分けて解説させていただこうと思います。(続)

 

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