昨年映画化されたこともあり、改めて話題になった司馬遼太郎の「峠」ですが年末から年始にかけて読了してみました。
河井継之助と北越戦争についてはそれなりに関心をもって、これまでも折に触れて河井に関する著作を読んでは来たのですが、本丸ともいうべき「峠」については初めて手に取りました。そもそも司馬遼太郎の作品を読了したのは30年以上ぶり、のような気もします。
河井継之助については優れた人物であることは疑いようもないとは思いますが、長岡藩の家老として北越戦争に至る経緯については様々な評価があると思います。40歳を越えたばかりの若さもありますし、学問を長く治めてきたが故の、理屈に頼りがちといいますか、「東」にも「西」にも与しないという、正道といえばいいのですが敢えて隘路を行く面など、もう少し狡猾さがあれば戦争は回避できたような気もします。
ただ、北陸の小藩の、武士としてはそう高位の家柄でもなく、風采も上がらず、学問的にもとび切りの秀才とも言えず、剣術などにも興味を持たないという、ある意味でだれからも自己投影しやすい河井のパーソナリティと、唯我独尊ともいえる河井を否がおうにも巻き込む時代の激しい転回は、一個の小説としてとてもよく完結しているように思いました。
この間、就寝前に読書をしてみましたが、深夜にスマホやテレビ画面を見るよりは不思議に心が落ち着くような気がしました。折角ですので、他の司馬作品も手に取っていきたいと思います。