今尾恵介著「地図帳の深読み 100年の変遷(帝国書院)」を読む

 

 地図帳の老舗・帝国書院と地図研究家・今尾恵介氏がタッグを組んだ『地図帳の深読み』

 今回のテーマは、ズバリ「昔の地図帳」。

 学生時代の教科書は捨ててしまったけど、地図帳だけは捨てずに残してある。そんな方は、

 意外と多いのではないでしょうか?

                                    帝国書院

 

 上のうたい文句にひかれて購入させていただきました。帝国書院の地図帳は高校生の時に使用していましたが、確かに今も自宅の書棚に取ってあります。

 学生時代は地図帳を読み物としてしょっちゅう眺めていましたので、市町村合併が進んだ今も昔の自治体名がスラスラ出てくるのはその産物なんだと思います。若いころの記憶って、すごいものですね。

 

 この本の内容で特に興味深かったのはP134~の「過去の地図帳に残る三角州の原形」です。いわゆる教科書的な、典型とされる三角州は例えば広島の太田川の地形だと思います。まさにドのつく定番ですが本書では更に三角州を3っの類型で分類しています。円弧状三角州、カスプ状(尖状)三角州、鳥趾状三角州を代表的なものとして紹介されていますが、鳥趾状の事例として琵琶湖西岸が上げられていました。

 

 たしかに琵琶湖に流れ込む河川の三角州は鳥趾状がほとんどで、西岸だけでなく東岸も併せて琵琶湖沿岸の特徴と言ってもいいように思います(例えば姉川)。土地利用や地質的に川に流れる土砂が多い川が多いため、堆積する速度が速いことも要因なのでしょうね。ただ、なんとなく円弧を描かない三角州は三角州ではないような、肩身の狭いような気がするのは私だけでしょうか。円弧状の方が明らかに都市的発展を遂げているあたり、鳥趾状はコンプレックスを絶えず抱えているような気がします。

 

 本書に使用された地図の多くはまさに学生時代に親しんだ色彩でいろどられ、統計資料も懐かしく、改めて地図はタイムカプセルであると実感した次第です。内外の装丁もさすが専門出版社だけあってセンスもよく、大変楽しませていただきました。

 

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