デービッド・アトキンソン著「新・生産性立国論」の感想

 ネット上で、とある知り合いの書評が目に入り、デービッド・アトキンソン著「新・生産性立国論―人口減少で経済の常識が根本から変わった」(東洋経済新報社)を手に取ってみました。

 著者であるデービッド・アトキンソン氏については名前程度は知っていましたが、著書を読むのは初めてです。イギリス生まれで、ゴールドマンサックスを経て、現在は小西美術工藝社の社長を務める、その道の有名アナリストですね。

 

 今回、同書の何が引っ掛かったかといえば第6章の中の「生産性の低い企業は退出させなければならない」の節で公示地価の問題についてふれてある箇所です。要約すると下記のような内容でした。

 

 ・日本の地価算定方法は約半世紀前から全く変わっていない

 ・毎年とんでもない数の不動産物件を1か所につき2名筒派遣している

 ・全物件を物理的に(境界石も確認)、敷地をテープで計測

 ・何十年前のやり方をずーっと忠実に繰り返している

 

 デービッド・アトキンソン氏はこれからの日本の人口減少をどうやって対策していくべきかを提案していますが、移民を受け入れる、老人を働かせる、女性を働かせるの3点を強調するとともに、生産性を向上させるために企業数を無理に維持したり、業界団体を守ることをやめるて、国民の生活水準を重視すべきと説いています。

 公示地価の調査など、氏によれば昔ながらの仕事であり、守るべき理由も意味もない、とばっさり切り捨てられていました。「国益を食いつぶしている企業(団体)を守る余裕はない」との厳しい言葉も書かれていました。

 

 まあ英国人だから、日本人と違って少々過激だなあ、とは思いつつ、私の近所の公示地価の調査ポイントも田舎であることから「ここ必要?」と思うような、不動産の取引事例もほぼないような地域の物件までが毎年調査されており、正直なところ税金の無駄使いと思わないではありません。公共事業の際の土地買収の算定の基礎といったって、公共事業もそんな頻繁にあるわけもないですしね。なんだか、こういっては不動産鑑定士さんには大変申し訳ないのですが、同じようなことがいわゆる「士業」には少なからず共通しているはずで、土地家屋調査士や行政書士も他人事のように安穏としていられないのですがね。

 

 話は変わりますが、先日は長年の知人の銀行支店長がわざわざ私の事務所を訪問してこられて投資信託の勧誘をしていただきました。申し訳ないですが、いつから銀行員は投資信託販売員に成り下がったのか!と思います。投資信託の販売がそのものは悪ではないのですが、企業の資金需要が乏しいことから融資を生業とする銀行(員)が余っているのは間違いなく、それに引き換え金融機関の数は不良債権問題のまま、これでは折角の優秀な人材の無駄遣いになっていますね。それを(多分内心では)幹部職員らも自覚しつつ、方向転換ができないところが日本社会のおおきな問題点だと考えます。この際、抱えている人材を生かすために、銀行が多角経営に乗り出して、人手が足りないとされる保育園や老人施設を運営したっていいと思うのですが。そんなドラスチックな経営改革ができないからデービッド・アトキンソン氏に日本の経営者は「奇跡的に無能」と貶されるのでしょう。

 

 現在時あたかも参議院議員の選挙期間中ですが、選挙目当ての耳障りのいいお話は全て眉唾物だと思っています。何かを守るためには、何かを切り捨てなければならない、厳しい「選択」が求められる時期にこの国は来ていると思いました。

 

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