G空間EXPO 2017「地籍と災害〜今の社会問題を考える〜」

 2017年10月12-14日、東京・日本科学未来館にて開催されました「G空間EXPO 2017」(本年度テーマ地理空間情報科学で未来をつくる)に参加してきましたので、簡単ですがご報告をさせていただきます。

「G空間EXPO 2017」とは地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現へ向けて、産学官が連携し、地理空間情報と衛星測位の利活用を推進する場です。特に今年は準天頂軌道の衛星が2機、静止軌道の衛星が1機追加で打ち上げられた節目の年ですので、否でも応でも期待が高まりまっています。

まずは日本土地家屋調査士会連合会主催のシンポジウムの報告です。 

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G空間EXPO 2017 講演・シンポジウム

全体テーマ「地籍と災害〜今の社会問題を考える〜」

主催 日本土地家屋調査士会連合会

 

午前テーマ 社会問題解決のための地籍 

 

研究報告

「地籍情報を中心とした一元的土地行政情報管理の為の標準化の必要性」 

山中 匠(日本土地家屋調査士会連合会研究員)

 

事業説明報告

「土地家屋調査士調査情報保全管理システム「調査士カルテ Map」について」

株式会社ゼンリン 

 

午後テーマ 地籍と災害 

 

基調講演1

「地名と災害の関係」 今尾恵介氏(一般財団法人日本地図センター客員研究員)

 

基調講演2

「熊本震災に伴う地籍図等の早期復旧支援」 小門研亮氏(国土交通省土地・建設産業局地籍整備課企画専門官)

 

災害報告1

「熊本震災の実態と熊本会の対応報告」(福岡鋭一朗氏(熊本県土地家屋調査士会副会長)

 

災害報告2

「災害対応における地籍図の利活用」 花島誠人氏(国立研究開発法人防災科学技術研究所主幹研究員)

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 まず、トップバッターとして、今年八月の滋賀会での研修会にもお越しいただいた山中匠先生(広島会)のご報告です。LADMによる標準化の必要性をニュージーランドでの事例を参考に力説いただきました。日本の登記制度はガラパゴスと言われますが、LADM(地籍情報管理)の世界的な進化の大きな波が打ち寄せてくる中で、どう身を処すべきかを考えさせられました。

 ダーウィンの進化論では「強いものが生き残るのではなく、変化に対応できたものが生き残るのだ」、と言われています。土地家屋調査士も社会や技術の変化に対応できる「しなやかさ」を備えなくてはならない、と思いました。

 

 続いて、土地家屋調査士調査情報保全管理システム「調査士カルテMAP」についてご紹介がありました。イメージとしては、現在では各事務所ごとに業務データのバックアップを行っていますが、クラウドを利用して有志の土地家屋調査士がグループを形成し、そこに保存する、といったイメージでしょうか。そこに地図機能や地図コンテンツを重ねて、そのグループの参加者はいつでも、だれでもデータを引き出して利用することができるシステム、といったところかと思います。株式会社ゼンリンに現在の岡田連合会長が副会長時に掛け合ってこのシステムを実現されたようです。連合会長、肝いりのシステムなのですね。

このシステムの肝は土地家屋調査士同士の情報共有を容易にする、という点だと思います

が、果たして土地家屋調査士がこのシステムを活用し、どこまで本気で連携できるのか、実際に稼働すればそれぞれの事務所収入にも直結する問題だけに道のりは多難のようには感じられました。

このシステムの普及のために注文を付けさせていただきますと、CADソフトを無償で配布し、その条件としてこのMAPの利用を義務付ける(連動させてしまう)とか、そうしたメリットがないと普及には限界があるとは思います。ただ、開発に携われた方々も当然そんなことは想定されていると思いますので、今後の動きに期待したいところです。

 

 午後のトップは今尾恵介先生でした。今尾先生はかつて滋賀会主催の地籍シンポジウムでご講演いただきましたが、お話を伺うのはそれ以来です。なお、滋賀会にお越しの際には今尾先生の高い知名度を生かし、会場にあふれんばかり、想定以上の多くの聴衆を獲得いただきましたが、今回も一番聴衆が多かったのが今尾先生のご報告だったと思います。

 今尾先生からはまず地名をもとに安易に「ここは危険地域である」といった安易な考え方によって書かれた書籍がベストセラーになっている昨今の風潮に警鐘を鳴らされました。

なぜなら日本の地名は元々の呼び名があり、そこに後から入ってきた「漢字」の意味を無視して、音だけであてはめたような地名が多いこと、近現代においても安易に地名が変更されていることなどを指摘されました。

 また、今尾先生のお気に入り?の「滋賀県守山市浮気町(ふけちょう)」についてもご紹介がありました。また昨今話題の加計(かけ)も地名として何か所かであるようですが、これは「ガケ(崖)」由来の地名で、似ている音を単にあてはめたようです。確かに今は読めるようになりましたが国会で話題になるまでは当然「かけい」と読んでいましたね。

 地名からその土地の由来や履歴に思いをはせて、個人的に楽しむのは自由ですが、「サンズイヘン」の漢字が地名に含まれているから、この土地は水害にあいやすい、などといった週刊誌的な、フェイクニュースの類に惑わされず、地盤工学や地形学、地質学などの科学的見地から調査を行ってはじめて判明することだ、と、きつく戒めておられたことが印象に残りました。

 

 続いて一昨年四月の熊本地震の際における国土交通省土地建設産業局地籍整備課小門研亮氏(国土交通省土地・建設産業局地籍整備課企画専門官)からの報告でした。

震度7クラスの地震が二回、ほかにも数多くの余震によって、震災前の地籍調査の座標等の成果では現地にあわなくなることは他の震災でも経験済みであり、そうした大地震の際には国土地理院から「補正パラメータ」が出されます。その補正パラメータを、そもそもどうやって作っているのか、という大変興味深いお話でした。

 ちなみに、補正パラメータとは、地震による地殻変動が発生した地域の基準点で再測量を行い、地震前後の成果の差からその地点の変動量を算出し、その算出したデータをもとに格子点上に変動量を推定し、とりまとめたファイルのことです。

 また、補正パラメータの精度評価結果についても言及がありました。内部評価では約1センチメートル、外部評価でも約3センチメートルのずれであり、地籍図の修正に使用して全く問題のない、いい精度が出ていたそうです。

 

 続いて熊本県土地家屋調査士会副会長の福岡鋭一朗先生からは、実際の被災地でのご体験、熊本地震での土地家屋調査士会としての活動報告でした。お聞きしていますと、直接専門性と関係のない作業もあり(例 仮設住宅の受付事務補助・建物罹災調査随行等)、専門性が求められる作業(官民境界確認・地図修正作業に関する精度確認測量・職権建物滅失登記等)ありということで、現地でのご苦労がしのばれました。

 また、福岡先生は大変な被害があった益城町に事務所を構えておられるとのことで、緊急時には乞われて役場職員と一緒に救助活動にも活躍されたそうです。私の持論ですが、土地家屋調査士は地域に愛されてこそ、生きる資格だと思っているのですが、先生の活動はまさに地域に愛され、地域に貢献する土地家屋調査士のお手本ではないかと感じました。

とにかく、こうした大規模な災害の際には、瞬間最大風速的に少なくとも数日間は官公庁のマンパワーが絶対的に不足してしまうと思いますが、土地家屋調査士がその高い公共性を生かして穴を埋める一つのパーツとして頑張っておられる様子がよくわかりました。ただ、こうした活動も日ごろの信頼関係があってこそのことでしょうから、滋賀会としても今回の熊本でのご経験を上っ面だけでなく、その土台となっている地道な活動全体を大いに参考にさせていただきたいと思いました。

 

 最後に、花島誠人氏(国立研究開発法人防災科学技術研究所主幹研究員)からの報告は災害対応における地籍図の役割を、災害の発災から復興に至るまでの道のりを「急性期」→「亜急性期」→「慢性期初期」→「慢性期」にわけて、それぞれの時期に必要なデータ・地籍情報について解説をいただきました。他の行政情報システムと地籍図の情報の連携が不可欠である、という点を特に力説いただきました。たしかに、大きな災害を目の前にしてもなお、縦割り行政を現場に持ち込んでいては救出作業もままならないですよね。

 普段はあまり聞きなれない「防災科学技術研究所」ですが、その活動は幅広く、そして防災を中心に高い専門・公共性をもっておられる研究所ということが、よくわかりました。

 

会場内で行われていた測量コンテストの様子 若い学生さんが頑張る様子はとてもいいですね!

 

 

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