地籍問題研究会第19回定例研究会に参加してきました

 

 平成29年7月15日、地籍問題研究会第19回定例研究会が横浜市立大学にて開催されました 一参加者として傍聴してまいりましたので簡単に感想を述べさせていただきます

 

 今回の研究会の全体テーマは「人口減少社会と境界・土地問題」ということでしたが、その中でも滋賀の土地家屋調査士にとってはなじみの浅い?区分建物に関連するお話がメインに取り上げられました 

「区分建物なんて資格試験以来、縁がないよ」という方もおられるものと思いますが、私もいわゆる一般的な「マンション」みたいな区分建物の登記とは開業以来全く縁もなく、今後も多分ないだろうという確信?もありますので、今回のテーマを当初お聞きした際に正直なところ、食指が動きませんでした 

 

 ただちょうど先週のことだったかと思いますが、たまたまあるテレビの番組で限界集落ならぬ「限界マンション」として区分建物の問題が取り上げられており、登記制度の根幹にかかわる議論も同時にされていましたので大変興味深く拝見しました その延長で、今回の研究会でも例えば土地家屋調査士なりの人口減少社会や空き家対策面での社会貢献や、そこに関連する業務拡大などで、何かヒントがあるのでは、と思い参加させていただいた次第です

 

第1部 空き家問題と境界・土地問題―人口減少

「趣旨説明 全国の取組み・横浜市・横浜市立大学の取組み」

 齊藤広子氏(横浜市空き家対策協議会座長、横浜市立大教授)

「横浜市の取組み」

 中川理夫氏(横浜市建築局企画部長)

「空き家対策への取組み」

 上田尚彦氏(神奈川県土地家屋調査士会広報部次長、神奈川県土地家屋調査士政治連盟会長)

 

 第1部のお三方の報告で共通して印象に残ったのは「横浜みたいな大都会でも空き家問題対策をやっているのだな」という点です 田舎者の僻みかもしれませんが、横浜なんて、ほっておいても人口が増えるような、恵まれた地域でなにが空き家だ、限界集落を抱える田舎の現状に比べたら…、と思わないではないのですが、大都市は人口のボリュームが大きい分、質はともかく、空き家の量は多い、との説明もあり納得しました

 また、神奈川土地家屋調査士会からのご報告では、会として県内各地の市町村に実際出向かれて、空き家対策の進捗状況のヒアリング調査をされているとのことでしたが、大変熱心にご活動しておられる一端がよく理解できました

 また第1部のコメンテーターの藤井俊二創価大学大学院法務研究科教授からは昭和の昔、我妻栄が書いたと思われる論考を引き合いに、現在のわが国の登記制度と不動産事情のかい離を説明され、大変印象的でした

 

第2部 マンションと境界・土地問題―都市のコンパクト化

「趣旨説明 日本のマンション管理の課題、横浜市のマンション管理の実態」

 齊藤広子氏(横浜市空き家対策協議会座長、当研究会幹事)

「マンション再生時の土地問題」

大木祐悟氏(旭化成不動産レジデンス(株)開発営業本部マンション建替え研究所主任研究員)

「マンションと境界問題」

 西田貴麿氏(神奈川県土地家屋調査士会副会長、境界問題相談センターかながわセンター長)

 

 引き続き第2部では実際にマンション建て替えの現場にも携わっておられる大木祐悟氏からの報告がありましたが、実に興味深いものでした。

そもそも自分がマンションを購入すると仮定して、どこまでマンション敷地に興味を持つかといえばほぼ全く関心を持たないと思います 一戸建てなら敷地図面や境界杭を確認したり、細々と調べる方でも、マンションなら「敷地権、なにそれ?」みたいな感じではないでしょうか

 でも、それは考えてみれば空恐ろしいことで、そもそも敷地権についての無知があり、マンション住民全員が所有者、という状況が逆に無関心を引き起こし、そのまま総無責任状態という結果を招いているように思います また、あまりよろしくない事例ですがマンション敷地が虫食い的に分筆され、勝手に所有権移転されている等の事例もご紹介いただきました   

 おそらく土地家屋調査士が分筆の手続き代理を行っているとは思いますが、クライアントからの依頼だからといって、何のための手続きなのか、はたしてその必要性・正当性はあるのかを専門家として事前に把握する必要もあるのでは、と思います いくら分筆行為自体には法的に問題がないにせよ、土地家屋調査士倫理とは相いれないものと感じました

 

 全体の感想をまとめますと、土地家屋調査士として人口減少、空き家問題にどう貢献するか、という点、本研究会でもまだまだ見えてこなかったと思います ただ、例えば神奈川会で活動してこられたような試行錯誤や模索が大事なことで、能動的に動かなければ何も見えてこないのだとも思います 

「土地家屋調査士だからできる」、「土地家屋調査士しかできない」、社会貢献への模索ははじまったばかりだ、と切に感じた地籍問題研究会でした

 

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